リンゴの最適な切り方を発見した話[9日目]

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この記事はShiftallのプロジェクトに関わるメンバーが日替わりでブログを更新していくアドベントカレンダー企画の9日目です。その他の記事はこちらのリンクからご覧下さい。

アドベントカレンダー2018
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こんにちは稲垣@Shiftallです。

今回は業務とはあまり関係のない自然科学系のテクニックを開発した話です。

最適化をせんとや生まれけん

プログラミングの楽しみ……というか目標の一つに最適化というものがあります。特にマイコンのプログラミングだと、高速動作するプログラムを小さくコンパクトに作ることが、消費電力の低減、ひいては製品価格を下げ利益を増やすことに繋がります。つまりプログラムの無駄をなくすことは正義なのです。それでプログラミングを究めようとする者は逆に日常生活でもそういう考え方をするようになります……いや逆に元からケチなのでプログラミングでも最適化をするのかも知れませんが……。

最適化がいかに有意義なことか分かりましたね。ではリンゴの切り方を最適化したときの話に行きましょう。

リンゴの無駄

図1. リンゴ
図1. リンゴ

本題のリンゴです (図1)。普通は四分割して芯を取ると思います (図2)。

図2. 四等分にして芯を取ったリンゴ
図2. 四等分にして芯を取ったリンゴ

こうですね。ウチでは皮は剥きません。普通はこれで美味しくいただいて終わりなのですが、実はよーく見ると無駄が見えてきます。見えましたか?

もう一度、取った芯を見てください (図2)。芯を取る目的は、種とその周りにある固い部分、つまり「種の部屋」を除去することですよね。でも「芯」だと言って捨ててしまっている部分にも果肉がたくさん付いています。リンゴの食べる部分 (可食部) と捨てる部分 (廃棄部) の区別というのは自明ではなく、包丁の入れ方一つで恣意的に決まってしまうものなのです。食べられるところを捨てるのは無駄です。この無駄をなくして最適化したいと思いますね。私は最適化したいと思いました。思わない方は心を入れ替えて出直してきていただきたいと思います。

無駄を無くしたいと思いますね。では次へ進みましょう。

最適な切り方の部分問題

リンゴの最適な切り方とはいかなるものなのか。それは「種の部屋だけを切って捨てる」ことです。しかもあまり切り刻むべきではなく可食部をまとまった形で残さなければなりません。具体的にはどうするのか。ここで私はリンゴの種の部屋の様子を思い描きました (図3)。

図3. リンゴの横断面の想像図
図3. リンゴの横断面の想像図

今まで無数に切ってきたリンゴの断面からの想像図ですが、中央にある星型の空間が種の部屋で、取り除くべき「芯」はこの部分です。星の頂点を通るように放射状に切り分けてやれば、種の部屋の固い壁が表面に露出します。するとその壁は表面を削ぐようにしていとも簡単に無駄なく取り除くことができるでしょう (図4)。芯として捨てる部分は非常に小さく、ほとんど果肉を捨てずに済みそうです。

図4. 半分のリンゴの最適化した切り方の想像図
図4. 半分のリンゴの最適化した切り方の想像図

構想は描けました。リンゴの最適な切り方、それは種の部屋の位置を特定してそこに包丁を入れることです。とりあえず、リンゴを横に真っ二つにすれば確実に実現できるはずです。

最適な切り方の全体問題

しかし日常生活において「リンゴはまず横に切る」という奇妙な手法はなかなか実践できることではありません。一人で食べるわけではないので、「変な切り方をするな」と言われそうです。しかもさらに五分割するわけですから、細かく十切れになってしまうのも悩ましいところですね。それで「外からは見えない種の部屋に狙いすまして包丁を入れる」ことが肝要です。これができなければ最適化は完成しません。

一見するとリンゴの内部を透視する程度の能力が必要になるように思えます。クレヤボヤンス。エスパーぼうしを被って厳しい訓練をしないといけないアレです。果たしてそんなことが可能なのか、それとも最初の一切れは闇雲に切ってみるしかないのか?

昔なにかの本で読んだのですが、科学の世界では「調べたら見つかりそうなところを調べる」のが鉄則なのだそうです。闇雲に包丁を入れるのではなく、「種の部屋の手がかりはある」と信じてそれっぽいところを切ってみるべきです。私はリンゴを手に取って見回しました。どこか怪しい部分はないか。どのリンゴにも共通するような手がかりが……そして見つけました。リンゴの尻にある「がく」の部分です (厳密にはがくではないのかも知れませんが)。数えてみると五つあります。とても怪しい (図5)。

図5. リンゴの「がく」
図5. リンゴの「がく」

そこで「がく」を切るように包丁を入れてみると、果たして! 種の部屋を両断することができました! (図6) いきなり上手く行っていて信じられないかも知れませんが事実なのでしかたありません。

図6. 種の部屋を狙って切り出したリンゴ
図6. 種の部屋を狙って切り出したリンゴ

ともあれ、「リンゴの『がく』は上から見たとき種の部屋と同じところにある」ようです。それで「がく」を両断するように包丁を入れていくと、種の部屋を両断し表面に露出させることができます。リンゴはいびつに育っていることもあり、必ず綺麗に的中するわけではありませんでしたが、私が切ってきたリンゴは基本的に全てそうなっていました。こうして私はリンゴを五分割で切るようになったのです。

リンゴの最適な切り方

リンゴの最適な切り方を発見したときの話はこれで終わりです。もう一度最適な切り方をおさらいしておきましょう:

  1. リンゴの尻を見て「がく」の位置を確認します。五つあります
  2. それぞれの「がく」を両断するようにリンゴを縦に五分割します
  3. 表面に露出した種の部屋を削ぎ落とします
  4. いただきます

※ナマモノなので五等分にはなりません。あくまで五分割です。

こうして切ったリンゴがこちらですが、リンゴの「芯」など実はほとんど無かったと言えるでしょう (図7)。

図7. 最適化したリンゴの可食部と廃棄部
図7. 最適化したリンゴの可食部と廃棄部

無駄を削ぎ落として最適化した結果はやはり美しいですね。

Happy cooking!