2018年にIoTスタートアップ界隈で起きたことや傾向のまとめ[24日目]

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この記事はShiftallのプロジェクトに関わるメンバーが日替わりでブログを更新していくアドベントカレンダー企画の24日目です。その他の記事はこちらのリンクからご覧下さい。

アドベントカレンダー2018
https://blog.shiftall.net/ja/archives/tag/adventcalendar2018/

写真は本稿とは関係ないフランスのハードウェアスタートアップ、Lovebox https://en.lovebox.love/

先日Makuakeの忘年イベントに登壇させて頂いたときに、2018年振り返ってハードウェアスタートアップどうでしたかねー、という話をしたのでそれに肉付けしてまとめたいと思う。ちなみにWEAR SPACEのクラウドファンディングはGREEN FUNDINGで実施したというのにMakuakeの忘年イベントに登壇者として呼んでくださる中山さんも坊垣さんも本当に心が広くて見習いたい。素晴らしい。

まずタイトルは短くするためにIoTと書いたが、まぁハードウェアスタートアップ全般ぐらいで読んでほしい。あと、自動運転系と産業用ロボット向けのAI系を入れると話が長くなるのと彼らはハードウェアそのものを提供しないので本稿のスコープからは外した。

過去3-4年ぐらいを振り返ってみると、2014-2015年くらいのメイカームーブメントブームみたいなものは過ぎ去ってしまい、IoTをやりたい!という話やハード系を絡めて起業したぞよ、という話は減った年だったなぁと思う。もっとも、実際には起業した直後にはメディアに出ることや調達ニュースが出ることは少なく、1年後ぐらいになることが多いのもあって正確には『2018年に表舞台に出てきたハードウェア系スタートアップは少なめだった』というのが正しい表現だろう。

VCから資金調達をしたうえで製品を発表したスタートアップの多くが、IoTaaS型(IoT as a Service。本稿における造語)だったことが今年の特徴だった。この流れは2016年頃から加速しており、いわゆるハード売り切りモデルでは日本国内のVCからの調達が難しいよねと見えてしまう流れになったと言える。

面白いのはこの「ぜったいIoTaaSじゃなきゃ!ってVCが言う」現象は日本独特のものってこと。中国やUS、フランスを見ているとハードウェアスタートアップはまだまだ売り切りモデルも根強い。USは売り切りモデルに上位サービスとしてサブスクリプションサービスを付ける例が多いのだけれど(例:Nest cam + Nest aware等)。

そういう流れに乗らなくていいはずのCVCや大企業内スタートアップみたいなところまでもがIoTaaSにずるずると流れていってしまうのが2018年の流れだったように思う。そこにきて、VC(Wil)の資本+ソニーの技術力で攻めていって華麗な売り切りモデルで2018年に新製品を出してきたのがambie。さすが松本さん伊佐山さんコンビという感じ。

一方、これまではIoTaaS型ではなかったハードウェアスタートアップが、そっち方面にガーッと舵を切って来たのも2018年。

2017年に追加資金調達をしてここ2年で売り切り型からIoTaaS型に振ったのがMoff社。冒頭で触れたMakuake忘年イベントのパネルディスカッションの席上で『VCに振れって言われたの?w』といやらしい感じで聞いてみたらそういうわけではないとのことで、粘り強く戦い、方針転換をやってのけた高萩さんの名誉のためにここに記しておく(笑)

スマートロックを提供するフォトシンス社が10億円を調達して、IoTaaSモデルに振るぞーって宣言したのも今年の4月。彼らももともとAkerunを売り切りモデルで提供していたんだけど、2号機ぐらいからB2Bモデルに振って継続課金モデルに切り替えた。

2017年にLINE傘下となったGateboxは2018年2月に初代モデルの出荷を開始。Gatebox社の前身はウィンクル社であり、彼らの最初の製品はAYATORI(アヤトリ)というスマホアクセサリーで売り切りモデル。そこから5年たって本年、IoTaaSに切り替えた製品を世に出されたということになる。ちなみにその直後7月には新型機を発表し、さらに10月に配送を開始するとの矢継早のアナウンスで『なんだってー、いつから開発してたんだー!』と思ったら10月に延期のリリース。まぁ、ハードウェアではよくある話です。暖かく見守りましょう。

最近起業しました組は、当初からIoTaaSでスタートするケースが多いように思う。IoTねこの健康管理用デバイス(トイレ)tolettaを提供する株式会社ハチたまは2018年に最初のハードウェアを提供した。これはIoTaaSどまんなか。ちなみにスタートアップではないがシャープがHN-PC001というまったく同じアプローチのねこ健康管理デバイス(トイレ)を発売したのもこの2018年。

tsumug社のスマートロックはパートナー企業向けに2018年から出荷開始とのニュースリリースが2017年末に出ていたが詳細は不明。とはいえIoTaaSモデルとのこと。

スタートアップではないが、ソニーのAIBOが発売されたのもIoTaaS的には大きなニュースだ。本体価格とは別に、月額払いでは総額10万円を超える3年契約という強気の価格設定が大きく話題になった(一括払いでは9万円)。税込20万円超えの本体価格に総額10万円近い月額料金、さらに3年間のケアサポートが5万円を超えるということで(修理無料になるわけではなく修理代が半額になるサービス)、3年ごとに15万円以上を払い続ける犬型ロボットという新しいジャンルが爆誕した。

もっともPepperの料金体系はB2Bとはいえaiboを超える3年間で50万円超え、保険パック(修理代金90%割引)は同じく3年で25万円超えだったのでそれと比べれば可愛いもの。

そしてそのPepperの開発に携わっていた林さんがGROOVE Xとして初の製品となる「LOVOT」を発表したのがつい先週。製品が出るのはまだまだ先ということだが、本体価格が税込35万円を超え、月額利用料3年分の総額は何と65万円Overという強気な価格。これが実際に成立するかどうかは発売後の楽しみに取っておきたい。

先日のMakuake忘年会パネルディスカッションでご一緒したパルスボッツ社美馬さん達によるロボット「ネモフ」も2018年末に出荷。こちらは売り切りモデルだが、何れにせよ2018年はGateboxも含めてロボット系のデバイスが多数世に出た・発表された・話題を作った1年だったとも言えるだろう。

ロボット系デバイスはその可動部の多さから継続使用に伴う故障も多く、IoTaaSモデルにせざるをえないところもあり、世の流れと合わせやすい。もっとも、掃除や洗濯といった実利を産まないタイプの家庭用ロボットが広く受け入れられるかどうかは2020年ぐらいに結論が見えてくるだろう。もっとも、ハードウェア系は10年に一度ぐらいまわりまわって花開くなんてことも多いのだが(Chumbyから10年回ってEcho Spot/Echo Show)。

話はかわってハードウェアスタートアップにおける調達額。日本におけるVCマネーが1社に数十億単位で注がれるようになったのもここ数年。電動車椅子を提供していたWHILL社は2018年に50億円もの調達を実施。2週間後に迫ったCES 2019でMaaS(Mobility as a Service)を大きく推進させる技術を見せる、と発表。これも広義のIoTaaSに振った事例ではなかろうか。これをやるから調達できた、という風にも見るべきで興味深い。

まだ製品は世に出ていないが、アバターロボットや医療機器の開発をやると宣言しているメルティンMMIも2018年に20億円強の調達を実施。先に触れたGROOVE Xが昨年末(12月)に同じく大きく調達をしたことなども合わせると、100億を超える。

ちなみにスタートアップの定義というのは難しいが、創業30年を超えるような老舗企業がIoTにピボットしてVCや事業会社から資金調達というニュースが増え始めたのは昨年ぐらいから。

2018年に20億円を調達したウエストユニティスは1983年創業だ。もっともウエストユニティスは変態ウェアラブル大好き塚田先生並にずっとウェアラブルだと言い続けてきたチームで、一朝一夕でウェアラブルだIoTだと言い始めたわけではないのだが。

IoTというよりは若干素材色が強いがHamonを提供するミツフジが30億円を調達したのは2017年の夏。2018年ニュースではないが、ミツフジはある種第二創業。創業年度は何と驚きの1956年というのだから恐れ入る。

話題変わって、珍しい方針転換というよりは方針追加? をされたのがトリプル・ダブリュー・ジャパン社。B2Bの排泄予知サービスとしてIoTaaSをやられていたところから、今年売り切りモデルのB2Cモデル『DFree Personal』の提供を開始。B2BのIoTaaSも続けて行かれるのだとは思うが、世の流れに逆行するあたりは括約筋と戦い抜いた猛者ならでは。

排泄といえば、144Lab社からうんこボタンが発売されたのも今年。こちらも売り切りモデルだが、『一定期間後のご利用を有償とするといった可能性があります』との記述があるのでもしかしたらIoTaaSモデルになるのかもしれない。

えーっとなんだっけ、括約筋と膀胱の話で一気に何を書いていたのかわからなくなった。2018年日本でのハードウェアスタートアップは、ロボットとうんこがIoTaaS、ぐらいで雑にまとめて終わろうかとおもうw

※本当のところはVTuber系の若干ハードというかカメラ・映像処理系が絡んだスタートアップがちょいちょい居て、あとVR/AR系がまだ多少は増えつつあって、ドローン系はかなりたくさんいるのだけれど、自社独自でハードウェアをゼロ開発している(つまり回路設計とメカ設計を含めて自社でやっている)人たちというとVR/AR/VTuber/Drone界隈にはあまり目立つプレイヤーがいなかったように思ったのでネタにしなかった。

CerevoとShiftallの話は色んなところでさんざん話して記事にもなっているし、Shiftallブランドとしての第一弾製品の発表をCES 2019の会場で行なう関係でいま何も言えないしなんで、まぁまたおいおい、ということで!

最後に言いたいことは「ハードウェアスタートアップ、いま起業しどきやで!」ということ。どういうことかというと、そもそもプレイヤーがいま減っているというか少ないという状態。私がCerevoをスタートしようと決めたときはVCから資金調達していたハードウェアスタートアップが日本に10社居なかったんじゃないかなぐらいの時期だった。

必然と、そういう時期にスタートすると注目をしてもらいやすくなるし、特別なバックグラウンドやスキルを持っているスタープレイヤーでなくとも、VCとも会いやすくなる。またミツフジ社やウエストユニティス社の事例は、社歴のある企業がハードウェア系領域でリスクマネーをガツンと調達できることを証明してくれた。

第二創業も含めてハードウェアでスタートアップしてみる、そんな人が増える2019年になるといいなと願っています。そしていつも言っていることですが、創業するぜ!という人はいつでもご相談いただればと。個人としてできることもあるだろうし、Shiftallとして支援できることもあるかもしれない。

それでは皆さん、メリークリスマス。